『図書の文化史』 解説・目録

図書の文化史 〜粘土板からインキュナビュラまで〜

 明治大学図書館は、文字や書写材料の歴史を伝える貴重な資料類を、長期にわたって少しずつ集めてきた。今日では数も徐々に増え、コレクションとして充実してきている。
 司書課程には「図書および図書館史」という科目があり、その教材ともいうべき資料類を、受講生のみならず、広く学生諸君に公開していただく機会を得た。人類の文化史ともいうべき記録と保存について思いを馳せていただきたい。

文字の発生
 1998年12月16日の『毎日新聞』は、紀元前3300年前後に粘土板や壺に刻まれた象形文字を、エジプト先王朝時代の墳墓を調査中のドイツ考古学研究所が発見したと伝えている。のみならず、ギュンター・ドライヤー同研究所所長は、これらの文字の解読にも成功したと発表した。放射性炭素による年代測定では、発掘されたもののうち、大半は紀元前3200年頃のものであったが、一部は3400年のものもあったという。APによる写真は、粘土板に刻まれた「東」と「西」を意味する線刻文字も掲載しており、古代文字の発見と解読に新たなページが加えられた。
人類は長い口誦の時代を経て、文字を考案し、記録し、保存してきた。無論、失われたものも多く、今日、我々が知りうるのはそのごく断片的なものに過ぎないかもしれない。ともあれ、残されたものが解読され、古代社会について、多くのことが明らかになってきている。
ことに19世紀に入り、ゲオルク・グローテヘント、ヘンリー・ローリンソン等による古代メソポタミアの楔形文字解読の成功は、古代の宗教、生活、社会の状況などを知る手がかりとなり、1857年、学問としてのアッシリア学誕生の日を迎えた。一方、これに先立つ1822年に、エジプト学が始まっている。ジャン・フランソワ・シャンポリオンらによる古代エジプトのヒエログリフ(聖刻文字)やヒエラティック(神官文字)、デモティック(民衆文字)などの解読が果たした役割は測り知れない。このような古代文字の解読は、人々に古代へのロマンをかきたてる契機ともなった。
解読にまつわる話のなかでも有名なもののひとつは、最古の叙事詩といわれる『ギルガメシュの叙事詩』の発見であろう。1845-54年にかけて、イギリスのレイヤード卿がイラクのアッシリアの古都ニネヴェを発掘し、数万枚の粘土板を発見した。アッシュル・バニパル王の王宮書庫であったと推定されている。これらの粘土板はロンドンの大英博物館に運ばれた。
当時楔形文字の解読に関心を抱いていた大英博物館のジョージ・スミスが1872年に、粘土板に『旧約聖書』の「創世記」に記されている「ノアの大洪水」に似た記述があることに気づいた。すなわち洪水伝説の原型にあたるものであることが判り、『ギルガメシュ叙事詩』へとつながるのである。
大英博物館に保存されている数万点にのぼる粘土板の文字の解読には、今後200年はかかるだろうといわれているが、これまでの解読により、既に古代メソポタミアのシュメール人の都市国家や人々の生活、社会の様子がかなり判明している。

書写材料
 他方、記録媒体も変遷を重ねる。紀元前18-17世紀のハムラビ法典は、閃緑岩に刻まれていた。その後、粘土板、パピルス、羊皮紙や犢皮紙、あるいは竹簡、木簡、帛書、貝多羅葉などが用いられ、紙の発明へと到る。
 製紙法は当初、中国から国外に伝えることが禁じられていたが、日本には610年に伝わり、独特の和紙づくりが発達する。一方、ヨーロッパに伝わるまでには1000年以上かかり、また伝播後も紙の利用が普及するには時を要したが、15世紀半ばの印刷術の発明、ルターの宗教改革などによる印刷物の需要により、紙は広く利用されるに到った。

写本
ヨーロッパの修道院では6世紀頃から写本づくりを、修道士たちの仕事のひとつとして始めるようになった。祈りをこめて写された文字そのものの美しさに加えて、聖書における福音書の区切りや段落の始まりなどに描かれた精巧な細密画とその色彩と文様の華麗さは眼を見張らせるものがある。
やがて11世紀末に大学が発生し、ヨーロッパ各地に大学が設立されると、多くのテキストが教師と学生の双方にとって必要となった。13世紀に入ると、修道院での写本づくりとは別に写本工房ができ、写字生といわれる専門家が活躍するようになる。そこで転写されたのはテキストおよびその注解のほか、時祷書の類であった。時祷書とは基督教の信徒たちが、個人の礼拝用に用いた書物で、13世紀頃に一定の形が作られ、その後16世紀にかけて広く用いられた。中世のベストセラーといわれるほど数多くつくられたため、現在も比較的多くの書が残っている。これら時祷書にも、彩色を施された図像が描かれている。キリストやその使徒たちなど聖書にあらわれる人物像のほか、聖人が転写をしている様子などが描かれているため、当時の生活を知るよすがともなり、史的な意味を有する美術作品としての稀少価値がある。

グーテンベルクの印刷術とインキュナビュラ
 写本製作は、15世紀半ばにグーテンベルクが印刷術を発明したことにより(厳密に言えば、彼が発明したというより、彼以前の人々のそれまでの試みを改良したのだといわれるが)、次第に印刷に取って代わられ、16世紀以降、衰退してゆく。1450年以降、ほぼ50年間に印刷された書物はインキュナビュラ(初期刊本、揺籃期本)と呼ばれ、数万点が現存している。これらの初期刊本は、当時愛でられていた写本を模範とし、その名残を残す貴重なものである。
(文学部 阪田蓉子)

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A. 文字の発生と書写材料
1 エジプト死者の書  紀元前300年頃 布製 5.5×16cm        091.6/21//H
 初期プトレマイオス王朝の布製『死者の書』の一部。ヒエラティック(神官文字=ヒエログリフを簡略にした古代エジプト文字)で記されている。

 
2 貝多羅(ばいたら)経典 書写年不明 46×6cm  貝葉数量: 73葉          183.81/2//H
 貝多羅に経典を書写したもの。貝多羅とは梵語pattraの音訳語で、「樹木の葉」の意味だが、特に文字を記すのに用いられる多羅樹の葉のこと。古来インドなど南アジアで紙が流通する以前より、ヒンドゥー教や仏教の聖典書写に用いられた。貝多羅を乾燥させて、葉面に針(鉄筆)で経文を彫り、その跡に「すす」を流すと黒褐色の文字が残る。幅5-6cm、長さ30-60cmに裁断、書写した経典を夾板(きょうばん・書物を保護するため、2枚の板で書物を挟み紐で結ぶもの)で押さえ、左右の小穴に紐を通してしばり、書冊にして保存した。

 
3 シュメール朝粘土板印章  紀元前2029年 10.8×5.1cm      091.6/20//H
 イッビーシン治世第1年当時、王室貯蔵庫で発行された計算書。楔形文字で羊の受領とその支払について記されたもの。
4 シュメールの楔形文字が刻まれた粘土板の伝達文 メソポタミア ウル第三王朝時代 紀元前2100年頃 091.6/19//H
5 シュメールの楔形文字が刻まれた粘土板   紀元前2300〜2200年頃 091.6/19//H
6 シュメールの楔形文字が刻まれた粘土板   紀元前17世紀頃 091.6/19//H
7 新シュメールの楔形文字が刻まれた粘土円錐   紀元前2120年頃 091.6/19//H
 新シュメールの楔形文字の例。太い円錐の粘土に刻まれた奉献文で、GudeaによるLagash統治時代のNingirsu神殿建設を祝うものである。
8 古バビロニア語の楔形文字入り円筒印章 南メソポタミア 古バビロニア時代 紀元前1900〜1600年頃 091.6/19//H
 向かい合って立つ二人の人物が描かれており、左は角付きの装飾冠を被り、襞入りの長い衣を身につけた神で、片手を腰に当てており、右は無帽の崇拝者で、長い襞入りの衣を着て片手を挙げて神を崇拝している。かつての所有主を記す二行の碑文がみられる。
KAL-dwe-er Aqar-Wer
dumu bi-la-du-ú Biladûの息子
 
9 エジプト象形文字の例 エジプト 新王国時代 紀元前1200年〜紀元2世紀頃 091.6/19//H
 パピルスに書かれた『エジプト死者の書』断片で、来世のための呪文が書かれている。
10 エジプト神官文字の例 エジプト メンフィスまたはファユーム 紀元前4世紀〜紀元2世紀頃  091.6/19//H
 亜麻布に書かれた神官文字の例。神官文字は、象形文字を簡略化したもので、神官らが記録を取るのに用いた。この布片は、『エジプト死者の書』からの文言を含んでいる。
11 エジプト民衆文字の例   エジプト 紀元前7世紀〜紀元2世紀頃 091.6/19//H
 神官文字をさらに簡略化した民衆文字でパピルスに書かれた商業文書の断片。
12 コプト文字の例  エジプト 4〜7世紀頃 091.6/19//H
 コプト文字でパピルスに書かれた商業文書の断片。コプト語は古代エジプト語から派生した言語だが、現在ではほとんど使われていない。
13 ギリシャ語の例  エジプト 2〜6世紀頃 091.6/19//H
 パピルスに筆記体のギリシャ文字で書かれた商業文書の断片。
14 アラム語の例  シリア 1〜3世紀 091.6/19//H
 イエスの時代に聖地エルサレムの民衆の言葉であったアラム語を用いて鉛に記された呪術文書。
15 ササン朝の文字の例  古代ペルシア 224〜650年 091.6/19//H
 名前が入れられたササン朝ペルシアの印章。

 
16 ブラーフミー文字の例  バーミヤン 2〜5世紀 091.6/19//H
 後の多くのインド文字の基礎となったブラーフミー文字でシュロの葉に書かれた文書の断片。
17 カロリング朝後期の文字の例  スペイン 10世紀 091.6/19//H
18 シトー修道会の筆写体  フランス ブルゴーニュ シトー修道院 1150年頃 091.6/19//H
 ヴェラムにシトー修道会のロマネスク体文字で書かれたラテン語文書の一部。1098年のシトー修道会設立からわずか半世紀後に書かれた、リヨンのフロルスによる『シトー修道会の本山であるブルゴーニュのシトー修道会におけるパウロの書簡の解説』という中世教父写本の一部。

 
19 フランスの写字生による時祷書の一葉  フランス 15世紀末〜16世紀初頭 091.6/19//H
 ラテン語でヴェラムに書かれた時祷書の一葉。18行の文章が褐色インクにより、バタルダ体で書かれている。赤と青のテンペラ地に磨かれた金による2行大の頭文字「M」が祈りの冒頭に入れられている。
20 14世紀イギリスの法廷文書  イギリス 1306年 091.6/19//H
 ラテン語で書かれたRicardus Duraci, Mansus de Calasillisの土地譲渡に関する公証人証書。
21 16世紀イギリスの法廷文書  イギリス 1578年 091.6/19//H
 ラテン語法廷文書。Stopesley, Linton, BedfordshireのThomas PyggottからJohn Francklyn他に対する譲渡証書。証人およびPygottの署名入り。エリザベス一世統治20年目2月14日の日付入り。

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B.写本 MS(Manuscript)
22 中世彩色写本零葉 聖書  1300年代 フランス         091.6/23//H
 聖書のレビ記部分。ラテン語。ヴェラム。23.5×17 cm。
23 中世彩色写本零葉 時祷書 1410年頃 パリ 091.6/24//H
ラテン語。ヴェラム。21×16 cm。
24 中世彩色写本零葉 交唱聖歌集 14世紀中頃 イタリア       091.6/25//H
 大型写本からの断片で、本来は表頁の右隅にあたる部分。角笛を肩に下げ、弓をまさに射んとする人面獣身像が描かれている。部分的に見える譜面は朱の四線。ここに見られる装飾は14世紀ピサの聖歌集写本の典型的なもので、おそらくピサで制作されたと考えられる。ヴェラム。22 ×14 cm。
25 中世彩色写本零葉 詩篇集 1250-1300年頃 ベルギー     091.6/29//H
「鐘を演奏するダビデ王」という標題がついた詩篇集の零葉。ダビテ王を描いた大型の頭文字「E」と、幻想的な動物を描いた行間装飾が入れられている。ダビデの足下には弦楽器が描かれている。ダビデはイスラエルを統一し、最盛期を築いた王である。芸術的才能にも恵まれ、旧約聖書には彼の作といわれる詩篇も記されている。ヴェラム。18×14cm。
26 イタリアの写字生による小型聖書の一葉 イタリア ボローニャ 1250年 091.6/19//H
 ラテン語でヴェラムに書かれた小型聖書の一葉。民数記31-33章が、ゴシックの小文字体で褐色インクにより55行にわたって書かれている。赤と青による頭文字や欄外装飾、赤字による章題が入れられている。

 
27 パリの写字生による聖書の一葉  パリ 1250年頃 091.6/19//H
 二ツ折り判パリ聖書の一葉。エゼキエル書31-32章が50行にわたり黒インクの細いゴシック体で書かれている。章題および行末装飾には赤と青のインクが用いられ、ペン装飾が施されている。
28 イギリスの写字生による詩篇集の一葉  イギリス 14世紀 091.6/19//H
 ラテン語でヴェラムに書かれた詩篇集の一葉。黒インクによる角ばったゴシック体の文字が17行にわたって書かれている。青インクと磨かれた金箔による1行題の頭文字多数。磨かれた金箔地に青と白による2行大の頭文字「A」が1点、詩篇冒頭に入れられている。
29 フランスの写字生による時祷書の一葉  フランス 15世紀中葉 091.6/19//H
 ラテン語でヴェラムに書かれた時祷書の一葉。文章は15行で褐色インクにより、ゴシック体で書かれている。1-2行大の頭文字は、赤または青のテンペラ地に磨かれた金箔を用い、アカンサス葉と花模様の縁飾りが施されている。
30 ケルズの書 Book of Kells  【ファクシミリ版】          099.3/32//W
 8世紀末ないし9世紀初頭にアイルランド系修道士により制作された聖福音集。制作地は諸説あったが、現在ではスコットランドのアイオワ島とアイルランドのケルズの修道院の連携で完成されたとの説が有力である。華麗な装飾や挿絵に彩られたページが、ウルガタ版聖書(384年に聖ヒエロニムスによって完成された標準ラテン語訳聖書)の本文ページに挿入されている。ケルト・ゲルマン起源の唐草文様を惜しみなく用いて、2つのページを除く全てのページが彩色されている。装飾の緻密さ、文様表現の伝統、色彩の豊かさ、書体の美しさなどから、「装飾写本芸術」の最高峰と称えられている。ケルズの修道院に伝来し、17世紀以来今日までアイルランド共和国のダブリン大学トリニティー・カレッジ図書館に保存されてきた。
31 リンディスファーン福音書 The Lindisfarne Gospels 【ファクシミリ版】   099.3/342//H
 7世紀末にイングランド北東部のリンディスファーン島のアイルランド系修道院で制作された福音書。本書と『ダロウの書』『ケルズの書』をあわせた3つの写本はアイルランドの修道院美術の至宝として名高い。司教イードフリースによって、聖カスバートの墓所に捧げるために制作された。聖カスバートは、ローマ教会との対立で権威を失墜したリンディスファーン修道院の危機を救った聖人として、多くの人々に崇拝されていた。「カーペット頁」「装飾頭文字の頁」の精緻な装飾文様が特に目を引く。大英図書館蔵。
32 『聖母マリア讃詞集』 【ファクシミリ版】            099.3/121//H
 ヴァティカン図書館が誇る蔵書のひとつ。小アジア、コッキノバフォスの修道士ヤコボスが、ヤコブ原福音書など主に聖書外典に基づき、聖母マリアの前半生を、マリアの両親ヨアキムとアンナの物語から始まり、マリアの受胎、アリアの誕生、神殿行、婚約、受胎告知、エリザベト訪問、呪いの水試しに至る6編に収めらているギリシア語による讃詞集である。また、物語の展開に応じて配された見事な挿絵が、本写本の価値を高め、中期ビザンティン写本芸術の最高傑作と目されている。製作は12世紀前半と推定されている。
33 ベリー公のいとも美しき聖母時祷書  【ファクシミリ版】   099.3/135//H
 中世末期の彩飾写本のなかでひときわ美しく規模の大きなこの時祷書は、愛書家ベリー公が企画した彩飾写本のなかで最も美しいといわれているもので、ヤン・ファン・エイクをはじめ当時の主要画家がこぞって参画した。時祷書とは、14・5世紀のフランス、フランドルで数多く製作された ローマ・カトリック教会において、平信徒が個人的に使用するためラテン語または当該国語で書かれた「聖母への祈りを中心とする祈祷書」であり、この時祷書は数奇な運命をたどって今日に伝えられ、パリとトリノに分割保管されてきた。
34 クロイの時祷書  【ファクシミリ版】               092.6/35//H
 ブルゴーニュ公国の貴族の中で最も重要で由緒あるクロイ家の一員が、この時祷書の中に一種の記念帳風の書き込みを残していることから、『クロイの時祷書』と呼ばれる。フランドル写本芸術の代表的画家シモン・ベニングらによって彩飾され、装丁を含め完全な状態で今日に伝えられた絢爛たる時祷書を忠実に再現。月暦図、全頁大彩飾画に加えて、欄外には多数の花、鳥、昆虫、宝飾品、さらにヒエロニムス・ボッスの世界を彷彿とさせる怪物たちが描き出され、興味深いものとなっている。
35 ヨハンネス・ドゥフト、ペーター・マイヤー ザンクト・ガレン修道院図書館のアイルランド・ミニアチュール 1954年 099/4685//D
The Irish miniatures in the Abbey Library of St. Gall.
Olten: Urs Graf-Verlag ; New York: Philip C. Duschnes, 1954
 初期中世ヨーロッパにおいて修道院には当時の文化が凝縮していたが、その中心の一つがザンクト・ガレン修道院(現在のスイス北東部)である。この修道院は、7世紀にアイルランドから訪れた修道士ガルスが隠遁したことをきっかけとして719年に建てられたが、その後も移住者が続くなど、アイルランドの知的財産は修道院の中で影響を及ぼしてきた。
 アイルランド福音書を始めとする手稿・写本は今に残る有名な史料であるが、本書は第一部でアイルランドとの関係を、第二部で、ミニアチュールやその装飾について詳しく解説している。43点の複製図版が収録されている。
 
36 ボルソ・デステの聖書  【ファクシミリ版】
 ルネサンス宮廷文化が花開いたフェッラーラの君主,エステ家のボルソのために制作された2巻本ラテン語聖書(Bibbia lateina)。モデナの国立エステンセ図書館に所蔵されており、一般にボルソ・デステの聖書の名で親しまれている。タッデーオ・クリヴェッリら第1級の画家の手による本写本は,イタリア15世紀彩飾写本のなかにあって、挿絵および彩飾の質の点でも、量の点でも最も傑出した作品として、西欧彩飾写本芸術の全歴史において最も絢爛豪華な写本の一つとの評価を得ている。

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C.15世紀刊本 インキュナビュラ(初期刊本、揺籃期本)
37 グーテンベルク42行聖書零葉 【ファクシミリ版】        099.3/263//H
 1450年頃、マインツの金細工士ヨハン・グーテンベルクが発明した活版印刷術により、初めて印刷された聖書。1455-55年頃にかけて完成された。大型二ツ折で上下2巻本のラテン語聖書で本文は2段組。冒頭の9ページは40行、10ページ目は41行、11ページ以降は全て42行であるため、『42行聖書』と呼ばれている。当時のドイツで流行していたゴシック体を用い、朱を印刷や手書きで入れるなど、外見は中世写本に見えるよう腐心した跡がある。印刷後は未製本のシートを各地に送って、顧客の好みに合わせて大文字や余白に装飾が施され、製本された。現存本は48部。本零葉は、アメリカのHuntington Library所蔵本より制作されたファクシミリ版で、Canticum canticorum Salomonis(雅歌)、Prophetia Baruch(バルク書)、Actus apostolorum(使徒言行録)の3葉。
38 グーテンベルク聖書,マザラン版 【ファクシミリ版】        099/1586//W
 グーテンベルク聖書は『42行聖書』と呼ばれる他に、1763年書誌学者ドゥ・ボルがパリの枢機卿マザラン(Mazarin)の文庫から初めて埃にまみれた『グーテンベルク聖書』紙刷り本2巻(完本)を発見したところから『マザラン聖書』とも呼ばれた。本書は1984年パリのÉdition les incunablesにより刊行されたファクシミリ版である。
39 プラトン『全集』 1491年 ヴェネチア               091.3/885//H
Plato(427-347 B.C.) Opera. Translated by Marsilius Ficinus.
Venis : Bernardinus de Choris de Cremona and Simon de Luere, for Andreas Torresanus, 1491. 
プラトンは古代ギリシアの哲学者。15世紀イタリアの哲学者でプラトン学者であるマルシリオ・フィチーノによるラテン語訳。本書はヴェネチアのベルナルディヌス・デ・コリス・デ・クレモナとシモン・デ・ロエルの2氏に渡る印行で刊行された2番目のラテン語訳全集の完本。最初のラテン語訳全集は1484-1485年にフローレンスで刊行されている。なお、ギリシア語原典は1513年に初めて出版された。
40 トマス・アクィナス 『アリストテレス'形而上学'註解』 第2版 1493年 ヴェネチア 09.1.3/656//H
Thomas, Aquinas, Saint(1225?-1274) Commentaria sancti Thome libros metaphysice
   Venetiis : Simonem Beuilaquam, 1493.
 トマス・アクィナスはイタリアのスコラ学最大の哲学者、神学者。アリストテレス哲学をキリスト教思想に調和させ、中世スコラ哲学を完成させた。
本書はトマスが『神学大全』第二部・第三部を書いたのと同じ、1269-72年の第2回パリ大学教授時代に完成されたと考えられる著作。トマス・アクィナスが用いた註解の方法は、註解するテクストをいくつかの「講」に分け、それに詳細な逐語的註解を加えることから、「講義」と呼ばれた方法であった。「講義」は以後13-14世紀に註解の方法の主流となる。初版は1480年イタリア、パルマで刊行された。

 
41 Italian Incunabula          091.3/17//H
 no.14 Florence: Laurentius de Alopa, 1496
 no.18 Milan: Joh. Bissolus & Ben. Mangius, 1499
 no.88 Venice: Paganinus & Paganinis, 1499
 no.89 Venice: Johann Hamann, 1491
 no.100 Venice: Simon Bevilaqua, 1499
 no.103 Venice: Aldus Manutius, 1497
 no.105 Venice: Aldus Manutius, 1500
42  German Incunabura          091.3/18//H
 no.23 Basle: Michael Wenssler, 1478
 no.50 Mainz: Peter Schoeffer, 1471
 no.54 Nuremberg: Anton Koberger, 1475
 no.97 Strassburg: Johann Grueninger, 1496
 no.107 Ulm: Johann Zainer, c1480

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D.16世紀刊本
43 時祷書 『最も祝福すべき聖母マリアのための時祷書』 1522年 パリ 091.3/623//H
  Hore beatissime Virginis Marie secundu[m] usum Romanu[m] totaliter ad longum prerisqz nouis imaginb' huic nouissime recognitioni passim insertis adornate
Paris: T. Kerver, 1522
 パリのティールマン・ケルヴェールが1522年9月10日に発行した紙製の平信徒用時祷書。8折版で、全ページ大の木版画が44点、テキスト・ページにも全体にわたって周縁装飾が施されている。19世紀にシャグリーン革で製本し直されている。16世紀に印刷された時祷書には、羊皮紙製と紙製があるが、紙製の時祷書は破損しやすく、本書がきわめて良好な状態で残っているのは非常に稀有といえよう。
44 ルカ・パチョーリ 『算術・幾何・比例全書(スンマ)』 第2版 1523年 トスコラーノ 091.3/731//H
Pacioli, Luca (d. ca. 1514) Summa de arithmetica geometria. proportioni, et proportionalita  Tusculano : Paganino de Paganini, 1523
初版は1494年ヴェネチア刊で,複式簿記について論述された世界最古の印刷出版物として世界的に有名である。出版当時から大評判であり,この書をきっかけとして著者とレオナルド・ダ・ヴィンチが親交を深めたことはよく知られている。本書はその第2版。第2版は内容は初版とほとんど変わっていないが,活字やヴェネチア方言を読み易く修正し,誤植も訂正されるなど初版と比べると非常に読み易くなっている。
45 ヴェサリウス,アンドレアス『人体の構造についての七つの書』初版 1543年  バーゼル 091.3/622//H
  Vesalius, Andreas(1514-1564) Andreae Vesalii Bruxellensis, scholae medicorum Pataviae professoris, De humani corporis fabrica : libri septem
  Basileae: Ex officina Ioannis Oporini, 1543
 ヴェサリウスは1533年18歳でパリ大学医学部に入学し、医学を学ぶが当時ヨーロッパ医学の主流であったガレノス(Claudius, Galenus.A.D.125〜199)によるギリシア医学に失望し、ルーヴァンに戻って勉学を続けるがこの時に検死解剖や人骨標本の組み立てなどを積極的に行い、やがてイタリアのパドヴァ大学に入学して1537年、23歳にしてパドヴァ大学医学部の外科及び解剖学の教授に抜擢される。以後、実証によってガレノスの誤りを正し、近代的系統解剖学の体系を樹立した。その最も著名な成果が『人体の構造についての七つの書』である。この書は、実証に基づいた人体のあらゆる箇所の完全な解剖学的・生理学的研究であり、骨、筋肉、脈管、神経、腹部内臓、胸部臓器、脳に関する7巻からなる。解剖学の歴史はヴェサリウス以前、以後に分けられ、ヴェサリウスは近代解剖学の基礎を築いた人物として知られるだけでなく、同書の出版は同じ年に出版されたコペルニクスの『天体の軌道について』と並んで、近代科学の成立を決定づける記念碑的著作に位置づけられている。その木版解剖図の素晴らしさもまた特筆されるべきものである。

 
46 ヴェサリウス『人体の構造についての七つの書』【ファクシミリ版】  099/2751//S
 
47 ヴァレリアーノ『ヒエログリフィカ』 初版 1556年 バーゼル  091.3/842//H
  Valeriano, Pierio(1477-1560) Hieroglyphica, sive, De sacris aegyptiorum literis commentarii, Ioannis Pierii Valeriani Bolzanii Bellunensis
 Basileae: [S.n.], 1556
  著者のヴァレリアーノはベッルーノ生まれの人文主義哲学者、詩人。教皇クレメンス7世の庇護を受け、教皇の後見人ローマのイッポリート・デ・メディチとアレッサンドロ・デ・メディチの家庭教師となる。教皇の最高記録官も勤め、当時最も評判の高かった知識人の一人。
 1556年刊行のヴァレリアーノの主著『ヒエログリフィカ』は、1419年にギリシアで発見されたホラポロン(Horapollo)が書いたといわれる表意文字に関する書物『聖顕文字』(Hieroglyphica)やローマのオベリスクの碑文、また著名な人文主義者ベンボ(Bembo, Pietro.1470-1547)所蔵の『イシスのテーブル』などを参考にして、ヴァレリアーノが生涯に渡って表した古代エジプト文字研究の集大成であるが、ヴァレリアーノは象形文字を単なる文字記号として解釈するのではなく、そこに神から人間への象徴的なメッセージを解説している。エジプトのある神聖文字がどのような意味に対応しているかを示し、そのほとんどになぜその文字がその意味をもっているかを寓意を媒介にして説明する。。
取り上げるものは古代エジプト文字だけではなく、ギリシア=ローマ時代の貨幣、石造記念物、聖書、教父たちの聖書註解書に及ぶ。全58巻の大著であるが、文字の研究を超え、ルネサンス期の寓意的図像に関する百科全書である。この本は16世紀中庸から17世紀後半まで100年以上に渡って幾度も版を重ね、各国語で出版されている。明治大学所蔵本はギョーム・ビュデの『古代貨幣考』(1556年刊)が合綴されて製本されている。
 
48 ヴィメルカート 『アリストテレス「自然学」註解』 1550年   091.3/845//H
 VIMERCATO,Francesco (d. 1570). In octo libros Aristotelis De natvrali avscvltatione commentarii. Et eorvndem librorvm e graeco in latinvm per evndem conversio.
Lvtetiae Parisiorvm,apvd Vascosanvm,1550.
 ルネサンス期屈指のアリストテレス研究者、フランチェスコ・ヴィメルカートの主著。アリストテレスの註解書は、ほぼすべてこの時期に成立したと思われる、アリストテレスの思惟を洗練されたラテン語によって明らかにしたヴィメルカートの業績は、今日もなお高い評価を受けている。16世紀中葉のパリの印刷技術は、傑出した活字製作者によって高度に発展していた。この「註解」は、当時の印刷者がしばしば陥った過剰な装飾を廃しており、活字のみで構成されたタイトルや本文の版面はまさしく洗練の極みといってよいであろう。

 
49 ビュデ 『ギリシア語考』 1529年 [パリ]   091.3/886//H
Budé, Guillaume (1468-1540) Commentarii linguae Graecae
[Paris] : Venundantur Iodoco Badio Ascensio, 1529
 16世紀初頭のフランスの人文学者ギヨーム・ビュデの主著の一つ。フランスにおける古典学がもたらした記念碑的な作品。ギリシア語の辞典編集・語源・言語史についての記録を集成したもので、フランスにおけるギリシア語研究の礎となった。この書は数回の版を重ねビュデの名声を高めた。
 印刷はパリのジョス・バード(Josse Badius, 1462-1535)。手動印刷の様子を描いた有名なジョス・バード工房の商標が標題紙を飾っている。また、標題紙にトマス・ボール(Thomas Ball)との署名がある。
50  ダンテ『神曲』1502年 ヴェネチア アルドゥス・マヌティウス版 091.3/887//H
Dante Alighieri (1265-1321) Le terze rime di Dante 
Venetiis : In aedib[us] Aldi Accuratissime, 1502
 本書は、小型本やイタリック体を考案したことで知られる出版人アルドゥス・マヌティウス(Aldus Manutius, 1450-1515)が印行したダンテの『神曲』である。
 『神曲』はアルドゥス版以前にも、1472年の初版をはじめとして数種の刊本が知られているが、それらは二折判の大型本であった。1502年に刊行された本書は『神曲』初の小型本(八折判。今日の文庫本ほどの大きさ)であり、小さくて読みやすく通常の出版物よりも廉価なため『神曲』の普及に大きな役割を果たした。
 アルドゥス版『神曲』には1502年8月の初版と1515年8月の第2版があり、前者の初版第2刷の最終葉の裏頁には、アルドゥス工房の商標である「錨にからみつくイルカ」があるが、初版初刷の本書には無い。

 
51 ディオニシオス・アレオパギタ『著作集』 1502年 ストラスブール
 Dionysius Areopagita  Opera Dionysii Strasbourg : [s.n.], 1502-1503
 ディオニシオス・アレオパギタは使徒パウロの説教を聞いて回心した、アレオパゴスの裁判官。ディオニシオス文書は、ディオニシオスの名を騙った「偽ディオニシオス」によって6世紀初頭に書かれた文書で、『天上位階論』・『教会位階論』・『神名論』・『神秘神学』の四篇と書簡十一通から構成されている。この新プラトン派の思想に近い文書は、中世から近代初期に至るまでキリスト教神学に大きな影響を及ぼした。
 本書は三巻合綴。第一巻の前半(『天上位階論』)に続いて第二巻と第三巻があり、第一巻後半は巻末に製本されている。書肆の名は記されていない。装丁は改められているが、かつての羊革装も部分的に残っている。

 
52 ペトラルカ『ペトラルカ詩集』 1554年 ヴェネチア 091.3/600//H
Francesco Petrarca(1304-1374) Il Petrarca . Vinegia: Giouan Griffio, 1554.
ペトラルカはイタリアの詩人。イタリア叙情詩の名声を世界に広め、また古典研究を行って、人文主義の先駆者となった。ペトラルカは、自分の書物が読書人たちに自由に閲覧されるよう、ヴェネツィア共和国内のとある施設に遺贈することを考えていたが、実現されなかった。ペトラルカの詩集は、1470年にイタリア語の本としては初めてシュパイアー出身のジョンとヴェンデリンの兄弟によって刊行されている。

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E.17世紀刊本
53 ヨンストン 『諸動物の詳説』 オランダ語初版 1660年 アムステルダム 全6巻1冊本 091.3/841//H
 Jonstonus, Joannes(1603-1675) Dr. I. Ionstons Beschrijving vande natuur der viervoetige dieren nessens haer beeldenissen in koper gesneden
  Amsterdam: Bij I.I. Schipper, op de Keysers gracht, 1660
 ヤン・ヨンストンはポーランド出身で、プロイセンのトルン、スコットランドのセント・アンドルーズで医学と植物学を修めた。1640年から1655年まではライデン大学医学部教授。この間、『魚類・クジラ誌』、『四足獣誌』、『鳥類誌』、『昆虫及び蛇類誌』をラテン語でフランクフルトで刊行し(1650〜1653年)、1660年にはこれらを再編集して一巻本にまとめ、ラテン語からオランダ語に訳してアムステルダムで刊行された。この本は、刊行後僅か3年の1663年にオランダ東インド会社によって日本に舶載し、徳川四代将軍家綱に献上されるが、50年の長きに渡って幕府の書庫に眠ったままであった。この本が日の目を見るのは、海外の動向に関心の高かった八代将軍徳川吉宗(在位:1716〜1745)によってである。吉宗は幕府の御目見医師、野呂元丈(のろ、げんじょう.1693-1761)に翻訳を命じ、元丈は部分訳であるが和名『阿蘭陀禽獣蟲魚圖和解』を寛保元年(1741)に上梓している。本書は、江戸期の博物家・蘭学者から西洋博物学を代表する書物として珍重され、平賀源内、桂川甫周、大槻玄沢、吉雄耕牛が本書を所蔵していたことが知られており、日本の博物学史、西洋文化移入史のエポックメーキングとなった書物である。
 構成は、第1巻;四足獣誌(図版80枚)、第2巻;魚類・クジラ誌(図版48枚)、第3巻;水生動物誌(図版20枚)、第4巻;鳥類誌(図版62枚)、第5巻;昆虫類誌(図版28枚)、第6巻;蛇類誌(図版12枚)からなり、全250枚の図中には、アルブレヒト・デューラーの版画に基づいて製作されたことで名高いインドサイ図(第1巻中の第38図)がある。

 
54 ヨンストン 『諸動物の詳説』 【複製】               099/2756//S
 
55 マッツペルガー『絵解き聖書』 1685年 アウグスブルク  091.3/738//H
 
56 マッツペルガー『絵解き聖書』 1692年 アウグスブルク  091.3/738//H
Mattsperger, Melchior. Geistliche Herzens-Einbildungen inn zweihundert und funfzig biblischen Figur-Spruchen angedeutet. Allen andachtige[n] Herze[n], u. der Tugent-liebenden Jugent, zu einer gottseligen Belustigung, auch denen Einfaltigen, zu einer anmuthigen Vorstellung, unschweren Ergreiffung, und nuzlichen Fassung, auss allen und ieden Buchern der H. Schrifft, nach Herzen D. Martini Lutheri sel. Dolmetschung, von einem Liebhaber des gottlichen worts mit sonderbarem Freiss zusam[m]en gelesen, entworffen, und verleget. Auch inn Kupfer gebracht, und zufinden, ..
Augstburg: Bei Hannsz Georg Bodenehr, Kupferstecher, 1685
本書の内容は以下のたいへん長い書名に明確に表れている。
『250の/聖書の図像と言葉で表す/心の霊的想像/信心深い心を抱く全ての者、そして徳を好む若者の/法悦な喜びのために/また彼ら純朴な若者たちに/上品な想像を促し/感動を容易にし、更に有用な理解を助けるために/マルティン・ルター博士の翻訳による/聖書の全ての、そしてどの書からも/神の言葉を好む者の手で/特別な熱意を込めて拾い集め/企画、出版された/また銅版画師ハンス・ゲオルク・ボーデナーのもとで/銅板に彫られた   アウクスプルクにて 1685年』
 旧約及び新約聖書から500のフレーズを選び、各々に図像を配している。教訓を含んだ句が、従来の絵入り聖書とは異なり、日常的に目にするもの、即ちハートや人の耳や目、手足、動植物、建造物、どの家庭にもある道具などのエンブレムと組み合わされている。
 7年後の1692年に同じ出版社から別巻が刊行された。扉の図柄に1685年刊本との相違はあるものの、銅版画の中央には同様にハート形の空間を設け、これが『心の霊的想像500/別巻/250の/聖書の図像と言葉で表す…』という書き出しで始まって、ほぼ同じ内容の書名で埋められている。扉と見開きになるように「タイトル・ページの解説」が置かれ、その冒頭に「聖書の図像と言葉と題した前作は…神を愛する多くの、好意ある人々を満足させた」と述べて、7年前の出版が成功したことを示唆している。

 
57 マッツペルガー『絵解き聖書』 【1685年刊の複製】          193/104//D
 
58 ニーランド『オランダ薬用植物誌』第3版 1682年 アムステルダム 091.3/839//H
Nyland, P. (Petrus). De Nederlandtse herbarius, of, Kruydt-boeck
t' Amsterdam : By de Wed. Michiel de Groot, ... , 1682
 17世紀オランダの植物学者ペトルス・ニーランドによる植物誌の第3版。家庭における薬草栽培の方法などが明記され、実用書として愛読された。約150点の木版植物図版が収録されている。1670年刊行の初版本を底本に、津山藩医宇田川玄随が『遠西草木略』(寛政9年(1797)成稿、未刊)を著している。本書第3版は初版と同じテクストで、タイトルページの年号と序文のみが改訂されている。
59 キルヒャー『光と影の大いなる技法』1646年 ローマ         091.3/843//H
Kircher, Athanasius (1602-1680) Ars magna lucis et vmbrae
Romae : Sumptibus Hermanni Scheus , 1646
 日食や月食、彗星、星の占星術的な影響力、燐の発光、色彩、光学、日時計、幻燈についての著作。彼の磁石論の集大成『磁石』(1643年)の3年後に刊行され、重複しているところも多い。幻燈や光学装置の図版もあり、映像史、映画史の中でも言及される書物である。キルヒャーはスイスのイエズス会士・科学者。その多才と博識、探求精神により「最後のルネッサンス人」と呼ばれ、しばしばレオナルド・ダ・ヴィンチとも比較される。その著作は古代エジプトとその言語、象形文字、磁気学、磁石、音楽、天上界・地上界、光と影、暗号の秘密など広範な分野に及び、独創的な業績の数々は群を抜いている。
60 キルヒャー『支那図説』1667年 アムステルダム            091.3/654//H
Kircher, Athanasius (1602-1680) China monumentis.
Amstelodami : Apud Jacobum a Meurs , 1667

 本書は、1667年アムステルダムにて出版された原本を、同じ年にアントワ ープのJacob Meursが新たに版をおこして出版地をアムステルダムのままで刊 行したものである。イエズス会士の中国への伝道活動は、16世紀の後半に開 始され、キルヒャーの時代には宣教師たちが中国で得たさまざまな知見を本国 に伝えていた。それらの知識と、キルヒャー自身の宗教・言語研究とを結合し て、美麗な図版を加えて上梓され、東洋の地理、地質、植物、動物、宗教、言 語に関する出版物の嚆矢となった。
 
61 ホッブス リヴァイアサン 1651年 ロンドン
Hobbes, Thomas, 1588-1679 Leviathan : or the matter, forme, and power of a common-wealth ecclesiasticall and civill
London: printed for Andrew Crooke, at the GreenDragon, 1651
 市民革命期イギリスの代表的政治思想家ホッブスの主著で、社会契約説を打ち出した書。初版の口絵は、「リヴァイアサン」の擬人化した姿を象徴的に描き出している。本書には「1651年」刊とされている版が三種類あり、タイトルページの飾りに「人の頭」「熊」「装身具」とそれぞれ違う図案が使われている。チャールズ二世時代に復刻が禁止されたため刊年を変えて出版されたという。本学で所蔵しているのは、最初にロンドンで出版された「head」版である。
 牛革装。クーパー伯爵旧蔵、18世紀前半の製作と思われる、紋章の入った蔵書票がある。

 
62 ホメロス『オデュッセイア』1682年 パリ  091.3/618//H
Homer. L'Odyssée d'Homere. Nouvelle traduction. Paris: chez Claude Barbin, 1682
 ギリシア最古の大叙事詩のフランス語版。『イリアス』とともにホメロスの作品と伝えられるが、ホメロス自身の伝記も年代も明らかではなく、考証から紀元前800〜700年ごろ成立したと考えれられている。はじめから文字で書かれたのか、口承で伝えられたのかも未解決である。『オデュッセイア』は12100行からなる長編の叙事詩で、24巻に分かれ、各巻は24のギリシア・アルファベットの名で呼ばれている。出版社のバルバンは、17世紀パリの大古典主義作家の版元として知られている。

【用語解説】


図書の文化史出品リスト
小テーマ 通番 タイトルなど 展示期間
文字の発明と書写材料 1 エジプト死者の書  
2 貝多羅経典  
3 シュメール朝粘土板印章  
4 シュメールの楔形文字が刻まれた粘土板の伝達文 メソポタミア ウル第三王朝時代 紀元前2100年頃 A
5 シュメールの楔形文字が刻まれた粘土板 紀元前2300-2200年頃 B
6 シュメールの楔形文字が刻まれた粘土板 紀元前17世紀頃 B
7 新シュメールの楔形文字が刻まれた粘土円錐 紀元前2120年頃 A
8 古バビロニア語の楔形文字入り円筒印章南メソポタミア 古バビロニア時代 紀元前1900〜1600年頃 A
9 エジプト象形文字の例 エジプト 新王国時代 紀元前1200年〜紀元2世紀頃 A
10 エジプト神官文字の例 エジプト メンフィスまたはファユーム 紀元前4世紀〜紀元2世紀頃 A
11 エジプト民衆文字の例 エジプト 紀元前7世紀〜紀元2世紀頃 B
12 コプト文字の例 エジプト 4〜7世紀頃 B
13 ギリシャ語の例 エジプト 2〜6世紀頃 B
14 アラム語の例 シリア 1〜3世紀 A
15 ササン朝の文字の例 古代ペルシア 224〜650年 A
16 ブラーフミー文字の例 バーミヤン 2〜5世紀 B
17 カロリング朝後期の文字の例 スペイン 10世紀 A
18 シトー修道会の筆写体 フランス ブルゴーニュ シトー修道院 1150年頃 B
19 フランスの写字生による時祷書の一葉 フランス 15世紀末〜16世紀初頭 B
20 14世紀イギリスの法廷文書 イギリス 1306年 A
21 16世紀イギリスの法廷文書  イギリス 1578年 B
中世彩色写本 22 中世写本零葉, 聖書 13世紀 1
23 中世写本零葉, 時祷書 1410年ごろ 3
24 中世写本零葉, 交唱聖歌集 14世紀中葉 2
25 詩篇集零葉 挿絵入り頭文字(鐘を演奏するダビデ王)1250-1300年頃 1
26 イタリアの写字生による小型聖書の一葉 イタリア ボローニャ 1250年頃 2
27 パリの写字生による聖書の一葉 パリ 1250年頃 3
28 イギリスの写字生による詩篇集の一葉 イギリス 14世紀 4
29 フランスの写字生による時祷書の一葉 フランス 15世紀中葉 5
30 ケルズの書【ファクシミリ版】 A
31 リンディスファーン福音書【ファクシミリ版】 B
32 聖母マリア讃詞集【ファクシミリ版】 A
33 ベリー公のいとも美しき聖母時祷書【ファクシミリ版】 B
34 クロイの時祷書【ファクシミリ版】 B
35 ザンクト・ガレン僧院図書のアイルランド風ミニアチュール  
36 ボルソ・デステの聖書【ファクシミリ版】 全4巻  
15世紀刊本 37 グーテンベルク42行聖書零葉【ファクシミリ版】3枚  
38 グーテンベルク聖書,マザラン版【ファクシミリ版】  
39 プラトン「全集」 1491年 1
40 トマス・アクィナス “アリストテレス‘形而上学’注解”(第2版)1480年 2
41 Italian incunabula no.89,14,18,88,100,103,105
42 German Incunabula no.50,23,54,97,107
16世紀刊本 43 時祷書 “最も祝福すべき聖母マリアのための時祷書” 1522年 2
44 ルカ・パチョーリ “算術・幾何・比例全書(スンマ)” 第2版 1523年 1
45 アンドレアス・ヴェサリウス 「人体の構造についての七つの書」 1543年 3
46 アンドレアス・ヴェサリウス 「人体の構造についての七つの書」【ファクシミリ版】 5
47 ヴァレリアーノ 「ヒエログリフィカ」1556年 5
48 ヴィメルカート アリストテレス「自然学」注解 初版 1550年  (00基) 4
49 ビュデ『ギリシア語考』1529年 初版(02基) 2
50 ダンテ『神曲』1502年初版印刷(02基) 1
51 デュオニュシウス・アレオパギタ<著作集> 1502年 4
52 ペトラルカ『ペトラルカ詩集』ヴェネチア、1554年刊 3
17世紀刊本 53 ヨンストン「諸動物の詳説」1660年 1
54 ヨンストン「諸動物の詳説」【複製】 5
55 マッツペルガーの絵解き聖書 1685年 2
56 マッツペルガーの絵解き聖書 1692年 3
57 マッツペルガーの絵解き聖書【1685刊の複製】 4
58 ニーランド『オランダ薬用植物誌』第3版  1682年  (00特) 1
59 キルヒャー 光と影の大いなる技法 1646年  (00基) 2
60 キルヒャー『支那図説』(初版) アムステルダム、1667年刊 4
61 ホッブス『リヴァイアサン』初版 1651年 (02基?) 3
62 ホメロス『オデッセイア』パリ、1682年刊 5
無印:  随時展示予定
A: 5月26日(月)〜6月28日(土)まで展示
B: 6月30日(月)〜7月31日(木)まで展示
1: 5月26日(月)〜6月7日(土)まで展示
2: 6月9日(月)〜6月21日(土)まで展示
3: 6月23日(月)〜7月5日(土)まで展示
4: 7月7日(月)〜7月19日(土)
5: 7月21日(月)〜7月31日(木)
※: 定期的に入替

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第4回 明治大学中央図書館企画展示 図書の文化史
 
編集委員 伊藤孝幸・梅田順一・久保木和義・杉林真由美
滝由加子・畑野繭子・平田さくら・宮澤順子・吉田千草
発   行 明治大学図書館

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