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明治大学は、今年創立120周年を迎えます。1881年(明治14年)明治法律学校として開校
した日から数えて120年の年月になります。そして、この記念事業の一環としての駿河台A地
区施設整備計画事業の掉尾として、このたび新・中央図書館が完成・開館する運びとなりま
した。まことに喜ばしいことといわなければなりません。
さて明治大学図書館は、かねて様々の機会にいろいろな展示会を行なってきましたが、 今年はとくに創立120周年記念事業および新・中央図書館の開館記念事業の1つと位置づけ、 明治大学人文科学研究所と共同で、「蘆田文庫古地図コレクション」の展示会および展 覧会図録の刊行を行なうこととなりました。今回はその一部を展示するものであります。 これまで外部諸機関からの照会に応え個別的に開示してきましたが、展示会という形で 一般に広く公開するのは初めてとなります。 人文科学研究所は、図録の刊行を目標に「蘆田文庫編纂委員会」を設け研究を続けてき ましたが、さらに古地図の電子化に取り組んでおられると聞いております。このことは、 電子図書館化の方向と相俟って大いに期待しているところです。 新世紀の開幕に当たり、古地図に想いを馳せていただければ幸いです。 |
明治大学図書館長
三枝 一雄
地図から見る日本国土のアイデンティティ
江戸後期の伊能忠敬の人気が高い。 インターネットのメディアに浮かんで生きる現代人にとっては、足で国土をくまなく歩いて測量し、 筆と手で地図を作成した測量家・地理学者の足跡を追体験して、自分の足元を確かめたいと思うので あろう。自分が日本人であることを、戸籍ではなく地図によって、目と足で実感したいのである。故 蘆田伊人氏のコレクションは故奥村藤嗣司書長の尽力で本学に納まった、学術的にきわめて価値の高 い約2500点の地方史、地誌関係の図書類と古地図の貴重な資料集成で、図書館では学外からの照会件 数が最も多い本学の文化財である。
人文科学研究所は設立40周年記念事業として、1998年に蘆田文庫編纂委員会を設けた。前文学部長 小疇尚委員長以下、文学部、図書館、研究所の委員の3年間に亘る精力的な調査・研究の成果がようや く、本学創立120周年記念と新図書館開館に合わせて、図書館と共催の古地図展で公開される運びと なった。これは人文科学研究所初の目的研究でもあり、編纂出版に向けて、その美術的価値も評価さ れたい。明治大学人文科学研究所長
近藤 正毅<はじめに>
このたび、明治大学創立120周年 を期して建設中であった新・中央図書館が完成し、開館記念行事の一環として、本学図書館が所蔵 する古地図の展示会を開催することになった。
展示の核となっているのは、明治末年から第二次大戦後にかけて多くの研究業績を残した歴史地 理学者、蘆田伊人氏の蒐集になる古地図である。本学は蘆田氏本人による手写図を含む古地図約20 00点と、地方史、地誌関係の書籍類1000冊を『蘆田文庫古地図コレクション』として、1957年に文 部省の助成金を得て購入した。これには当時の図書館司書長、奥村藤嗣氏の慧眼と尽力に負うとこ ろが大であった。同コレクションは蘆田氏が研究の必要から蒐集したものが中心で、いわゆるコレ クターの収蔵品とは異なって比較的地味ではあるが、学術的な価値は図り知れないものがある。本 学ではこの貴重な資料集成をより一層充実すべく、その後も関連する古地図類を継続的に購入して おり、その内からも数点を選んで展示した。
『蘆田文庫古地図コレクション』の古地図には、郷土史関係の貴重な資料となるものが含まれて いることから、外部機関からの照会が少なくない。しかし残念なことにこれらの古地図は、学内外 の博物館の展示に貸し出されたり、関連学会が本学で開催された際に専門家に特別公開されたこと はあるものの、スペースの関係でこれまで図書館に展示公開されることがなかった。そのため、学 内でもその名称が知られていても、実物を目にした人は限られていたと思われる。このたびも場所 の制約から展示点数が多いとはいえないが、主要図を精選し、A. 赤水図とその周辺、B. 近世地図 成立史、C. 海外知識の受容、D. 江戸神田界隈の4つのテーマで掲げた。ゆっくりとご覧いただけれ ば幸いである。
現在、人文科学研究所設立40周年の記念事業として、同研究所と図書館が共同で「蘆田文庫編纂委 員会」を組織し、図録の刊行を目標に古地図の調査、研究を行なっている。この展示会は同委員会の 活動の中で発議され、各方面の協力を得て実現の運びとなったものである。
展示には、本学博物館、同館伊能秀明氏、盛太郎氏(レンタルのニッケン)の助力を得た。また、 図録作成にあたり一部に中野萬年氏撮影のフィルムを使用させていただいた。記して謝意を表したい。蘆田文庫編纂委員会
委員長 小疇 尚
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