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はじめに

 蘆田文庫中には伊勢漂民光太夫にかかわる地図が2点存する。すなわち「亜細亜亜墨利加対峙図」および「地球両半球図」である[1]。 これらはともに『北槎聞略』附図[2]と由来を一にするものであるが,これら附図である訳図には年紀等が意識的に写されておらず,またその原図もことごとく失われていることもあって,刊行年や刊行地が特定されていないことが多い。蘆田文庫の地図とは直接のかかわりはないものの,『北槎聞略』附図に関係する興味ぶかい小さな記事を『オランダ商館日記』中に見いだしたがゆえに,ここに報告しておきたい。あわせて関連する事柄について言及しておこうと思う。

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